ピンク色したマグネシウム



「真ってさ、酒豪だよね…。」
「……、はあ?」




 彼、千秋 真一は「カン」というなんかギャグみたいな音を響かせながら、缶ビールをガラステーブルに置いて、驚きを隠そうともしない目であたしを見やる。




「だってさ、それで4本目でしょ?あたし、そんなに飲んだことないよ。」
「4本ってお前、誰だって普通これくらいは空けるだろ?度数もそんなに高くないし…。」
「えー、そうなの?だって、あたし2本で気持ち悪くなってきたよ。」




 実際、今飲んでいるのは彼ひとり。あたしは、始めてすぐに飲む気が失せてしまった。だって、真がそんなにお酒に強いなんて思ってなかったから…。
 ペタリと頬をテーブルに付ける。ひんやりしていて気持ちいい…。




、お前何歳児?」
「真と同い年ですが、なにか。」
「開き直るなよ。大体、お前が貰ってきたんだろ?」




 彼がテーブルの上に残る、空けられていない数本の缶を突いた。数にして14本。このままのペースで行けば、確実に今日は何本か残る。




「貰ってきたっていうか、送られてきたっていうか…。」
「…?どういうことだ?」
「親からさ、送られてきたの。頼んでもないのに、こんなにたくさん。」
「…あー…。」




 あの人ならやりかねない。真の顔はそう物語っていた。
 家に帰ったら、覚えのないダンボールが届いていた。送り荷主は実家、中身は缶ビール。どうして送られてくるのか全く見当もつかない。
 不審に思いながら電話をしてみれば、




「なんかさ、母さんに内緒で父さんが買っちゃったやつらしいんだよね…。」
「…20本もか?…バレないって思う方がどうかしてる。」
「同感。どうしてうちの父さんって、こう…微妙なミスするんだろうね。」
「いいんじゃないか、あの人らしくて。」




 …他人事だと思ってない?思ってない、思ってない。彼は苦笑しながら缶ビールに口を付けた。
 んで、流石にこれはあたしひとりではどうにもできなから、ダンボールごと持って、真の家に来たわけなんだけど…。
 あたしは、テーブルから顔を離した。




「でも、あの人今禁酒中だよ?ちょっとは自重してもらいたかった。あたしにも火の粉がかかるんだから。」
「結局、自分の身か?」
「当たり前じゃん。」
「…。」




 胸張ってそう答えたら、呆れられた目を向けられた。だって、いいじゃんべつに。そう思ったって…。実際あたし、迷惑かけられてるし。
 っていうか、20本って。父さん、お酒そんなに強くないのに、相当我慢してたってことかな…。




「それよりも、の両親って今、日本に居るんだな。」
「…?居るよ、こっちに。言ってなかったっけ?」
「言われてない。あまり、関係はないけど。」
「まあね、うちの両親も放浪癖強いから。」




 確か1ヶ月前はロンドン辺りに行ってたって、言っていたような気がしないでもない。正確なところはあたしも知らない。だって、あたしも先生のところであっち行って、こっち行ってっていうのをやってたから。
 頬をもう一度テーブルに付ける。やっぱりひんやりしている。




「…お前ら親子だな。」
「何が?」
「なんだかんだ言って、酒が好きなところとか。今どこに居るのか、誰にも言わないところとか。」




 言いながら、さり気なく空けていたあたしの3本目を指差した。




「あー、ははは。だって、あるんだから飲んじゃわないと。」
「べつに俺はまだ飲めるけど?」
「…何?飲むなって言いたいの?」
「顔赤いぞ。酔っ払ってる。」




 酔っ払ってる?そうかな…、まだ意識ははっきりしてるような気がするんだけど…。思っていたら頭に手を乗せられた。グシャリグシャリ。




「ええ??何?!いきなり?」
「顔赤いし熱い。お前やっぱり酔ってんじゃねーのか?」
「そんなこと言ったら、真だってそうじゃん!素面だったら絶対しないよ!っていうか、手ぇ退けて!」




 髪の毛がバサバサになって目も当てられない髪型になった。慌てて手で直したら、クスクス笑われた。




「笑うことないじゃん!元はと言えば原因はあんたでしょ!」
「わ!え?ちょっ、止めろ?!おい!!」




 膝立ちになって彼の頭に両手を乗せれば、びっくりしたように左腕を捕まれた。っへ、でも残念。こっちは全体重をお前の頭に掛けてんだから、右手さえあれば何とかなるよ!
 ああ、でもあれ?立ち眩み…?




「って?おい!おい!!?!お前、大丈夫か?!」




 気づいたら真に思いっきり凭れかかっていた。
 あー、これじゃあ、真に子供って言われても太刀打ちできないし。お父さんのこと言ってらんないじゃん…。




「ああ、駄目だ。頭グラグラする、気持ち悪いぃー…。」
「だからって、ここで寝るなよ?おい?おい!?!!?」




 叫ばれて、肩を揺すられて、でもあたしの意識が保たれることはなくて、そのまま目の前は真っ暗になった。




 数時間後、真のベッドの中で、下で本人が寝ている状態で起きてしまって。ビックリしすぎて、叫んだら起こしてしまって、だって、真のベッドで寝てたんだよ!?場所が移動してるってことは、抱え上げられた?!え?!持ち上げられた?!!?
 そのまま取り乱してたら、首に腕を掛けられて、グイッと引き寄せられて、


「頼むから、ああいう無防備なこと、止めろよ…。」


 耳元で言われた。お蔭で顔が真っ赤になった。
 その言葉、そっくりそのままあんたに返したい…。








―――――――
えー、と…。遅れて大変申し訳ありません…。
リクは「お酒に酔った主人公が…」でしたが、いかがでしょうか…?
っていうか、これしかできなかったんですが…。orz


それでは、これからも「TILE」をよろしくお願いします。