[042] hide hid hidden
「空は、嘘をつかないな…。」
「…どうしたの?あなたがそんなことを言うなんて、らしくないわね。」
真夜中、ビルの屋上で、俺はシムカと一緒に夜空を見上げていた。生憎の曇り模様で、星は見えないけれど、風がとても気持ち良い。この季節特有の強めの突風が、俺のフードをバサバサと靡かせる。髪も同じようにバサバサいうし、コンタクトの目にこの強風は辛い。風から守るように、顔の側面に手を添えながら、
「なんだろうな…。自分自身もよく分からね。」
そのまま下を向いて靴を履くときみたいに、ホイールを下のコンクリにカツカツ当てた。癖みたいなものだ。気付いたら、悩んでるときとか、腑に落ちないときにやっているらしい。気に食わないことに、それに気づいたのはスピットだった。
シムカは、イッキのことで疲れたとか!って自信あり気に言ったが、俺は首を振った。違う、それじゃない。ほんとに、自分でも分からないんだ…。確かに、最近は自分の家に家出中のイッキと咢がいて、毎日騒がしいが、違う、それじゃないんだ…、それだけは断言できる。
「んー、じゃあスピットとケンカでもした?」
「…してねーよ。っていうか、どうして俺が不調だと、あいつが出てくるんだ?」
冗談じゃない。彼女を睨めば、クスクスと笑いながら、
「だって、いつもは彼と一緒でしょう?」
「好きで一緒なんじゃない。気付いたらあいつが隣にいるだけだ。」
視線を空に戻して、悪態をつくようにそう言えば、それでも彼女は笑ったままで、
「それ、スピットも似たようなことを言っていたわよ。」
「げ…。」
僕とは意識して一緒にいるんじゃなくて、いつの間にか隣にいる、らしい。
ったく、そういうのは男の俺に言う台詞じゃない、絶対に。…腐れ縁も、ここまで来れば、もう手遅れだな…。思わず俯いて嘆息。というか、逆にあいつとは最近、会っていない。前はウザいほど会っていたのに、ここにきていきなりぱったりとその足が途絶えてしまった。別に女でもないし、会えなくて寂しいとか、そんな女々しい思いは、…うえ、嘘…マジで…?
まさか、それだけはあって欲しくはない…、という思いとは裏腹に、なんだか非常に拙い…、心境。
いや、連絡ひとつ寄越さないあいつが、悪いんだ…。
「仲直り、できるといいね。」
「…そうだな。」
案の定、一瞬だけ彼女は不思議そうな表情をしたが、すぐにそれは緩やかな笑みに変わった