[052] lie lay lain
「つ、疲れた…。」
礼儀なんてそこそこに、あたしはテキトーに靴を脱ぎ捨てて、そのまま足音も気にせずに背後にこの部屋の主を置いて、素早くリビングに走り込んだ。ああ、なんか自分…女度低いなぁ、なんて思ったけれど、いまさら幼馴染の前で女でいることないかという結論に辿りついてしまい、そして勢いよくソファにダイブする。手近なクッションを引き寄せて、思いっきり抱きしめれば、真の家のにおいがした。
うん、どうせ真とあたし、15年以上の付き合いなんだし、気を使う必要って謎だよね。うわ、ってういかやっぱり高いソファって座り心地違うわー…。流れで寝そうだったけれど、それは上から掛けられた家主の言葉で防がれる。
「少しは遠慮するってないのか、…。」
「あ…、ごめんね。つい。」
「普通、ついでそこまで無遠慮にはならないと思うぞ…。」
言った瞬間「はあ」と呆れの溜め息が聞こえて、あたしはとりあえず居ずまいを正す。って言っても、寝っ転がっていた体勢が起き上がっただけなんだけどね…。
空いたスペースに真が座る。
「ごめんってば。真の家って、なんだか妙に落ち着くのよ。」
苦笑い気味にそう言えば、また溜め息が聞こえて、でも咎めるような言葉はかけられなかった。あたしは心の中でそっと微笑む。あたし、こいつのこういうところ…好きなんだよね…。なんだかんだ言って、真は優しいし、だからモテるんだろけど…。
「だからって自分の家じゃないんだから、素に戻るの止めろよな…。」
「ついだってば!あたしだってちゃんと節度は守ってますぅ。真の家でだけだよ。」
一瞬、真が大きく目を見開いたけど、よく分からなかったから見なかったことにした。
「ねえ!そういえば、Sオケって今どんな感じなの?」
「…コンマスが頼りない。」
「コンマスって…、あの…えー…、誰だったっけ?」
「の記憶力の悪さは相変わらずだな。今日、会ったろ。あの金髪の。」
「えっ?あのロッカーみたいな人?」
あっれー?あの人、かなりテンションも高かったから、てっきりクラシックはやらなさそうに見えたんだけど…。人間、外見で判断するのは悪いってことだね、うん。
その後も、他愛のない会話は続いて、学校で過ごすよりもここにいる方が断然、寛げちゃうから、あたしのだらしなさはたぶん当分、治りそうにない。
(081223)