[084] speak spoke spoken



さんってさ、何で…んなに強くなれたんだ?」




 隣に座るユウキからの質問に、あたしは「んー」と呻きながら、バクフーンの背を撫でた。つい今しがた、ポケモンバトルをしたばかりだったのだ。バクフーンが今、ボールから出ているのはそのため。
 強く…?強くか…。そういえば、前にも誰かに似たような質問をされた気がする…。あのときは確か…ゴールドだったか。そのときも、まともな返事はできなかったんじゃなかったっけか?んー…、難しい。




「強く…っていうのとは、ちょっと違うと思うんだよね。なんて言うのかな…生きるために必要だったから、かな?」




 ん?…ん??何だ、この理由?これはさすがに意味不明だぞって思ったら、案の定ユウキに「え?それっていったいどういうこと?」と返ってきてしまった。
 まあ、確かに…あたしの今の実力は、生きるために培ってきたもの、と言ってもかもしれない代物だ。それ以外で、あのときお金を得る術はなかったから。もちろん現在は、オーキド博士の弟子のようなことをしているから、微妙な収入はある。でもあのときは…こちらの世界に来てすぐの頃は、そうするしか…なかったんだよね。今だからこそ言えるが、あれは間違いなく「弱肉強食」の世界だった。そして自分は、中途半端に強かったから、生き残れた。




「いや実は恥ずかしい話、あたし家出娘なのですよ。」
「ええ!?さん、家出なんてしてたのか!?」
「うん、びっくりでしょ?あたしも自分に驚いたもの。自分にはこんだけの行動力があったのか!…って具合にね。」




 当然、これは嘘。実際は家出よりもずっと難しい。なんてったって世界を飛び越えてしまっているのだから。でもそれは、ユウキが知らなくてもいい情報。っていうか、あたしが言いたくない情報…か。
 バクフーンがわざとらしくニヤリと笑んだ。彼もあたしと同じような存在だ。元の世界であたしが育てていたポケモンで、それがどういったわけか、こちらの世界に一緒に来てしまったようなのだ。別に不都合なワケではなかったけど、なんだか巻き込んでしまった感じがあるから、ちょっとだけ申し訳ない。っていうか、たぶんあたし、彼らポケモンたちがいなかったら、残念ながらここまで成長することはできなかったんじゃないかなって、思う。そういう金銭的な面においても、精神的な面においても…。何度も言うようだけど、弱肉強食だったし、あの頃は。




「んー、だからなるべくしてなったって感じかな。」
「それ、笑って話せる内容じゃないと思うんだけど…。家出で強くなれただなんて、お世辞にも褒められたものじゃないよ。」
「いいの、いいの…褒められなくったって。別に自分のためだったし、もうほとんど思い出話だから。8年以上も前の話だよ?ネタにもなるって。」
「それ、きっと笑って言えるのだけだと思う。」




 ユウキが呆れたような溜め息をついて、あたしは「へへ」なんて笑いながらバクフーンに抱きついた。空が青くて、風が草原をサワサワ言わせながら走っていった。






(090215)