[034] freeze froze frozen



「よ、。相変わらずのんびりだな。」




 扉をガラッと開けて入ってきたに、俺はシャープペン片手に反対の手を上げて、そう言った。




「おはよう、。それは俺が、学校に来る時間が遅いってことですか?だったら、それはあなたが早いだけだと、俺は思いますよ。」
「あー、まあ…、否定はしない。」




 机の上に鞄を置いて、彼女は時計をチラッと見ながら返事した。まあ…、うん。1限目が始まる40分も前からいるやつって、結構な物好きだと思うよ。




「でも、お前もこんな時間に来てるから、あんま俺のこと言えないような気もすんだよね…。」
「…でも、あと25分で授業始まりますよ?」
「ごめん、その思考回路、俺よく分からない。」




 40分も25分も一緒じゃね…?そう思ったが、当の本人はそれほど気にしていないらしく、ロッカーの鍵を片手に廊下に出て行ったしまった。




「あ、おはよう。…、もおはよう。」
、おはよう。」




 廊下から、聞き慣れた声が聞こえると思ったら、だった。彼女は俺の後ろの机に鞄を置いて、戻ってきたと俺を交互に見た。




「こうして、改めて2人が一緒にいるところを、どう考えても男友達同士にしか見えないんだけど…。」




 まあ…、それも否定はしない。だって、2人とも一人称「俺」だし、着ている制服も男子のそれだ。でも、着たくて着てるんじゃなくて、俺は発注ミス。は知り合いに銀魂高校のOBがいるらしく、それのお古らしい。前に、それについて訊ねてみたことがあって、そう言われた。しかも他に言われたことで、、なんだか今、半分家出少女らしい…。しかも親からあまり仕送りしてもらっていないとかなんとか…。一人暮らしの時点でビックリだったけれど、あんまりな理由に絶句してしまったのも事実で、訊き終った数秒間は固まってしまった。
 だって、あのが家出してるなんて想像もつかないって…。




「べつにいいんじゃないですか?今は男女平等ですよ。」
「いや、。それちょっと論点ズレてる…。」
「まあ、いいじゃん。俺らもう成長しないんだし、着てる期間なんて残り僅かだし。」
「いや、だからどうしてもちょっとズレてんの?そういう問題じゃないと思うんだけど…。」




 そして、誰が最初か分からないけれど、とりあえず俺らに笑いが広がった。因みに、補足で説明すると、は俺と同じく転校生だったりする。どれくらい前って言うと、俺が4月に入学で、彼女の方は親の都合らしく、俺に3ヶ月遅れて、7月の初旬に入ってきた。だから、いきなりの転校生でクラスに空があったのがここ、Z組だったために、 の頭はそれほど悪いわけではなかったけれど、3年Z組に転校となった。
 っていうか、全員が全員3Zのやつらはバカが多いとか言ってるけど、なめんな。とかとか、勿論とか最強だから。まあ…、俺は、論外だけど…。
 と、そこに不思議な音が響いてきた。いや、不思議っていうか…、原因は分かってるんだよ。こんな安物のサンダルのペタペタした音出せる人なんて、あの人しかいないから。でも、問題は時間帯だ。いくら教師だって、この時間に教室に用があるとは思えない。っていうか、ホントに何やってるの?HRだって遅刻しないであまり来ないのに…。そう不思議に思いながら廊下に目をやってると、案の定、音の原因、坂田銀八先生が顔を出した。




ー。」




 思いっきり悩んでいたけど、案外ナチュラルに先生はクラスに入ってきた。っていうか、生徒を思いっきり名前呼びデスか。っていうか先生、何か持ってる…?もしかして鍵…?誰の家の…。え?っていうか、今の名前呼んだよね…?え?まさか?まさかの展開ってやつですか?MTってやつですか?




「?何ですか?銀さん。」




 え?銀さん…?普通に愛称呼び?どんな関係?俺はサッパリわけが分からなくてを見やったけど、どうやら彼女も状況が把握できていないらしく、「なんで?」の色の濃い瞳とかち合った。




「お前、階段とこに鍵落っことしてったぞ。あと、「銀さん」じゃなくて、「先生」な。一応ここでは俺、教師だから。」
「え…?あ、ホントだ。ありがとうございます。」
「呼び方についてはスルーか、このヤロー…。まあ、見つけたのは俺じゃなくて、大家さんだけどな…。」




 そう言って、坂田先生は何ごともなかったかのように教室を出て行った。そしても同じように何ごとも起こらなかったみたいにナチュラルに鍵をポケットの中に滑りこませ、俺たちの方を向く。




「で、何の話しでしたっけ?」
「何の話しでしたっけじゃなくて…!」
「え?何?、お前先生とどういう関係!?」




 彼女は俺たちの勢いをものともせず、キョトンとした。




「…、べつに何もありませんけど…?どうして、気になるんですか?」




 まるで、自分と坂田先生の関係は今に始まったことじゃないとでも言うような雰囲気だった。俺は全く分かっていない(と思われる)に畳み掛けるように近寄った。




「気になるんですかって…、普通教師と生徒が名前とか、ニックネームとかで呼び合ってたら気になるだろ!?」
「そうだよ!あたし、ホントに驚いた!」
「…、そんなの、ただの幼馴染だからに決まってるじゃないですか。」




 ……え?幼馴染…?と?坂田先生が…?




「ええ??!!」




 俺とから同時に驚きの声が上がった。




「ちょっ、待っ?!え?幼馴染ィ?!」
「はい。先生と俺、幼馴染ですよ。だから、この制服、先生のです。」
「ええ??!」




 そんな事実初めて知ったんですけど!っていうか、なんですかその事実!普通、そういうのって態度に出るはずでしょ?今まで気づかなかった俺らがおかしいの?




「え?ちょっと待って、少し整理させて…。先生とが実は幼馴染で、の着ている制服は、実は先生のお古ってこと…?」
「そういうことになります。」
「でも、まさか一緒に住んでるなんてことはないでしょ…?」
「…、少なくとも同じアパートに住んでますから、住所は大体一緒です。」




 の言葉にあっさりと返答する。あっさりすぎて逆に毒気を抜かれる。っていうか、もしかして混乱してんのかな…。さっきから「実は」って連呼してる気がする。っていうか、それを言ったら、俺だってさっきから「っていうか」の単語連呼してる…。
 っていうか、と坂田先生って同じアパートだったんだ…。




「…、そういうのって現実にありえたんだ…。俺、普通に絶句なんだけど…。」
「絶句の使い方が間違っているような気がしますが、とにかく事実です。」
「…。」
「……。」




 のその言葉に、なんだか俺たちは笑うしかなかった。