[074] shine shone shone



 季節は6月、梅雨の時期。当然、雨が降っているのは当たり前だ。6月なのだから。だから、廊下の窓ガラスから、雨が降り続ける様子を、物憂げに見つめるの姿は、案外珍しかった。


「雨、ですかィ?」
「うん、…。さっきまで晴れてたのに…。」


 彼女の隣に立って、同じように空を眺める。重たい空だ。朝はそうでもなかったのに、いつの間にか降り出したのか、今は、重い、暗い、冷たい雨雲が空を覆う。


「…そうでしたっけ?確か、今日は晴れたことなかった気がしますが…。」
「あれ?そうだっけ?じゃあ、今のなし。」


 俺の質問に、顔も向けず、感情も変えず、ただ、形式的な返答を返す。だから、俺も顔も空を見上げたまま、訊いた時と同じテンションで、そうですかィ…。と返す。
 静かな時間。流れるのは、ザァーという雨の音のみ。時間が時間帯なだけに、校舎内に他の生徒たちは見受けられない。
 完全な静けさ。単調な音の流れ。その中で、俺は口を開く。


「明日は、晴れますかねィ?」


 半分は独り言のようだった、まるで子供な自分の台詞。そう、それは、始まりがあるから終わりがあるのと同じように…。続いているからこそ、終わりなんて存在しないのと同じように。そして、それを期待しているかのように…。
 だけど、彼女はこう答えた。


「無理じゃん。だって、梅雨なんだから。」


 きっと、あと3日はこのままだよ。未だ視線を空に向けたままの彼女の返答に、俺は同じように、視線を変えず、そうですねィ…。と、返す。
 そうだ…。現実なんてそんなもんだ…。物語のように、うまくいく訳がない。そうは思っていても、先程、自分の口をついて出てきた言葉に対して、まったく感情を抱かない訳ではない。
 ただ、途轍もなく、後味が悪いというのは分かった。少しだけ、後悔し始めたところを、今度は彼女の独り言にも似た台詞が遮る。


「でも、まあ、別にいいんじゃない。だって、梅雨なんだから。」


 今度は、窓の外の空ではなく、自分の目を見て、そう言ってくる。さっきと似たような台詞。でも、何故だか、雨の合間に少しだけ日が差したような、そんな心境になり。俺は、笑って、そうですねィ。と、答えた。