ありえない攻撃
あんまりにも普通だったから、あたしは思わず訊き返してしまった。え?晋助、今何て言ったの?
「どうして俺が今、ここにいいるのか。言わなきゃ気付かねーのか?お前は…。」
彼の呆れた目線にあたしは「いきなりすぎでしょ?!普通このタイミングで言う!??」という言葉が頭の中をグルグルした。でも、なんとなくその行動ひとつひとつが彼らしかったから、言葉より先に笑みが零れた。
話は少し前に遡る。今日、あたしはいつものように晋助に呼ばれて外に出ていた。べつに彼とあたしは付き合ってはいなかったけど、隣にいて楽しかったし、満足していた。どちらも、これでいいと思っていた。今日までは。
だから今日も、いつものように会って、いつものように楽しく過ごして、甘い物の店に行ったり、暇つぶしにコンビニに行ったり、UFOキャッチャーやりにゲーセンに行ったり…。
それで今に至る。あたしはさっき晋助に「好きだ。」と言われた。
「え、でも…、もうちょっとでいつも通り「バイバイ。」だったじゃん…。そんな…、っいきなり…」
さっきは笑えたけど、今は言葉が見つからなくて視線は足元に落ちてしまう。だって、あたしも彼が好きだった。ずっと前から好きだった。一目惚れとかそういうのじゃないけど、いつの間にか惹きこまれていた。
「んなのどうでもいいだろ。俺はこの半端な関係が嫌いだったから言っただけだ。」
「…だからって、」
「」
彼の強い言葉。出かけた反論が喉の奥の方へ逃げてしまった。っていか、…言っただけだって…、軽いこと言ってくれる。あたしにとっては一大事なのに…。「で?お前は、どうなんだ?」と言われて、目だけを上げれば、策士的な笑みを浮かべた彼と目が合った。あたしは、緊張をほぐすように深く息を吸い、顔を上げた。
「あたしも好きだよ。晋助が、大好き…。」
ああ、言えた。つか言っちゃった…。今ならあたし、恥ずかしいのと嬉しいのでいっそ死ねるかもしれない…。
あたしの言葉を訊いた彼は、少しだけ息を吐いた。なんとなく、その行動が彼らしくなくて、少しだけ可笑しかった。そして今、彼はあたしが覚えている中で一番いい表情をしている。
「じゃあ決まりだな。」
「うん…。って、ちょっと待って、ちょ、だから何?いきなり引っ張んないで!え?ちょっとどこに行く気?!」
そう言って、晋助がグイッとあたしの手を掴んで、引っ張った。
今の時間もそう遅いわけではないけれど、これ以上遅くなると何かと面倒なんだよね…、あたしの家…。とか思ったけど、手を引っ張る彼の意思は強そうだ。諦めて、彼に従うことにした。大体、今から帰るところだってのに、どこに行く気なんだろう…?まあ、今日はこうやって晋助に勝手に連れて行かれるってことが多かったから、いまさらって言えばいまさらなんだけど…。
「ねえ、だからどこに…」
「どこってゲーセンに決まってんだろ。」
「げ、ゲーセン?!」
決まってんだろ…って、決まってないよ。あたし今初めて訊いたよ。っていうか、ゲーセンはさっき行ったばっかり…。
あたしの考えていることが分かったのか、彼はもう一言「プリクラだ。」と彼の口から出るには微妙な言葉で付け足してくれた。
…え?ぷ、プリクラ!!?何で??
そのまま流されるようにゲームセンターに入って、流されるように適当に空いている台に入った。よく分からなかったけど、とりあえずいつも要領で取っていく。なにも晋助とプリやるのが初めてなわけではないけれど、なんだかとっても複雑な思いが心の中を埋め尽くして、作り笑いしか浮かばなかった。不思議なことに彼の表情も微妙だった。
「なんだ、いつもテンションぶっ壊れてるやつが、今は大人しいじゃねーか。」
「…五月蝿い…、晋助だって、さっきから笑顔が微妙だよ。」
………。気まずくなった気がして、画面越しに目を合わせる。予想外にクスリと笑われて、信号が赤になるみたいにあたしの顔に火が点いた。…完全に彼のペースでちょっとムッとする。そのうち、「オラ、コレで最後だ。」と言われる。あ、次が最後か…。結局、最後まで晋助が何したかったのか分からなかったな…。でも、きっと何かあるんだろうな…。だって、晋助だし…。と、心の中で少しだけ身構えながら、電子音のカウントダウンを聞く。
『いくよぉー!!ハイ、チーズ!』
瞬間、右隣に立っていた晋助が動いた。途端、右目に衝撃、何かが当たった…。いきなりのことで思考回路が停止する。ラクガキ移動の指示でやっと意識がハッキリして、自分が何をされたのか改めて理解した。
「え?っちょ、今…っ!?」
「なにわけ分かんねー単語並べてんだ?」
「だ、だって…っ今!」
「いいだろ?不意打ち。」
そういう問題じゃないっっっ!!!…よくないよ…、ホント、…よくないよ。マジ心臓に悪い…。もういいや、なんかもうホントどうでもいいや…。もう晋助のペースにのまれるのやめよ…。もう自棄いこ…。
「あー、あー、分かった。晋助がそういうことするんだったら、あたしにも考えがある。」
「ほう…?言って見ろよ。」
晋助が余裕の笑みを浮かべてくるから、あたしも最高の作り笑いで応戦し、ひとり先にラクガキコーナーへと移る。
「ここからあたしがひとりでやるから、絶対入って来ないでね。」
ニッコリ笑ってそう言ってやれば、少しだけ晋助の表情が歪む。ザマ見ろ…。と思いながら、あたしも笑みを少しだけ歪める。
その後、とんでもないシーンが写ったプリクラが高杉の携帯に貼ってあったとかなかったとか…。